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交通事故の損害賠償金と相続税
1 死亡事故の場合
⑴ 死亡事故の損害賠償金
交通事故により被相続人が死亡した場合、加害者に対する損害賠償金が発生することがあります。
死亡事故による損害賠償金には、大別すると、慰謝料と逸失利益があります。
慰謝料とは、交通事故によって生じた精神的苦痛に対する賠償金のことをいいます。
慰謝料には、被害者である被相続人本人が被った精神的苦痛に対する慰謝料と、遺族が被った精神的苦痛に対する慰謝料があります。
逸失利益とは、被害者である被相続人が存命であったのであれば得られるはずであった収入のことをいいます。
慰謝料、逸失利益以外には、被相続人の葬祭費、診断書等の文書料があります。
⑵ 相続税が課税されるか
このような交通事故による死亡の損害賠償金については、相続税が課税されないこととなっています。
参考リンク:国税庁・交通事故の損害賠償金
つまり、慰謝料であっても、逸失利益であっても、相続税が課税されないこととなっています。
これは、死亡事故の損害賠償金は、現実には、被相続人が有していた権利を引き継いだものというより、遺族自身が有する権利であるというべきだからと考えられています。
このため、損害賠償金以外の遺産等について、基礎控除額を超える場合に限り、相続税が課税されることとなります。
2 傷害交通事故の場合
⑴ 傷害交通事故の損害賠償金
死亡交通事故の場合と異なり、被相続人が、傷害交通事故により、加害者に対する損害賠償を行っていたところ、損害賠償金を受け取る前に別の原因で亡くなってしまうことがあります。
傷害交通事故についても、被相続人は、本来、慰謝料や逸失利益について、損害賠償請求を行うことができたはずです。
そして、相続人は、被相続人が有していた傷害事故の損害賠償請求権を相続し、加害者から損害賠償金を受け取ることができることとなります。
⑵ 相続税が課税されるか
傷害交通事故の損害賠償金については、被相続人が受け取るべき損害賠償金を、相続人が引き継いで受け取ることとなりますので、相続等により取得した財産として、相続税が課税されることとなります。
このため、損害賠償金以外の遺産等に、傷害交通事故の損害賠償金を加算した額について、相続税が課税されることとなります。
もっとも、傷害交通事故の損害賠償請求の裁判が長期化している場合等には、相続税の申告期限までに、損害賠償金の額が確定できないことがあります。
このため、相続税申告に際し、損害賠償金をいくらとして申告を行うべきかが問題となります。
このような場合には、申告期限までに、裁判等で請求している金額について、合理的に認容されると予想される額に基づいて、相続税申告を行うより他ありません。
その後、申告期限後に損害賠償金の額が確定した場合には、修正申告または更正の請求により、確定した損害賠償金の額に基づいて、申告をし直すこととなります。