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相続税対策として行う生前贈与の失敗例

  • 文責:代表 税理士 西尾有司
  • 最終更新日:2023年12月7日

1 生前贈与の目的

生前贈与の目的には、様々なものがあります。

代表的なものとしては、ある人が所有している財産を減少させ、将来、その人について課税される相続税を減少させるというものです。

このような相続税対策を目的として、生前贈与がなされることがあります。

もっとも、相続税対策も、適切に行わなければ、まったく効果が生じないどころか、かえって、想定していない税金が課税される可能性があります。

ここでは、生前贈与の失敗例について、紹介したいと思います。

2 贈与者が判断能力を失ってから「生前贈与」を行った

この事例では、財産をお持ちの方が病気で意識不明の状態になってしまいました。

こうした状況の中で、子が、将来課税される相続税を減少させるため、孫名義の口座へ、110万円ずつの送金を行いました。

その後、「贈与者」が亡くなり、孫に送金された110万円を贈与済みの財産として、相続財産から除外して相続税の申告がなされました。

このような申告を行うと、後日、贈与が無効であり、贈与された財産を相続財産に含めるべきであるとの指摘がなされる可能性があります。

贈与は、あくまでも、贈与者と受贈者の合意によりなされるものです。

贈与者が判断能力を失っており、贈与の意思表示ができない状態になっていると、もはや、有効な贈与を行うことはできないこととなります。

同じように、贈与者が重度の認知症になってしまい、有効な意思表示をすることができない状態になってしまった場合も、もはや、有効な贈与を行うことはできません。

生前贈与による相続税対策を行うのであれば、贈与者がしっかり意思表示をすることができるうちに行う必要があります。

3 死期が迫った時期に相続人に対して生前贈与を行った

死期が迫った時期であっても、贈与者に十分な判断能力があれば、有効な生前贈与を行うことができます。

この事例では、贈与者の死期が迫った時期に、子それぞれに対し、年間110万円の生前贈与がなされました。

生前贈与は、年をまたいで2回行われ、1人あたり合計220万円の生前贈与がなされました。

ところが、贈与者が亡くなり、相続税申告を行う場面で、上記の相続税対策が効果のないものであることが判明しました。

相続人に対し、相続開始前7年以内(2023年12月31日以前になされた贈与については、相続開始前3年以内)に贈与された財産については、本来の相続財産とともに、相続税の課税対象となります。

特に、死期が迫った時期に、相続人に対して生前贈与を行ったとしても、結局、相続税の課税対象となってしまい、相続税の課税対象は減少していないこととなってしまうのです。

このように、死期が迫った時期に、相続人に対して生前贈与を行う相続税対策は、効果がないものとなる可能性があります。

相続税対策を行うのであれば、相続人ではない人、たとえば、相続人の配偶者や相続人の子に対して生前贈与を行うことも検討すべきでしょう。

また、2024年1月1日以降になされた贈与については、相続時精算課税の選択届出を行えば、相続人に対する贈与であっても、年間110万円までは相続税の課税対象にはならないこととなります。

相続税対策として相続人に対する贈与を行う場合は、相続時精算課税の選択届出を行うことも検討した方が良いでしょう。

4 死亡保険金の受取人に対して生前贈与を行った

先の説明を踏まえると、死期が迫った時期にであっても、相続人ではない人、たとえば、相続人の配偶者や相続人の子に対して生前贈与を行えば、必ず相続税対策になるのでしょうか?

ここで、1つの落とし穴があります。

3年以内の贈与加算の対象になるのは、相続人に対する贈与に限られません。

死亡保険金の受取人や死亡退職金の受取人に対して贈与された財産についても、贈与加算の対象になります。

このため、相続人以外に対して生前贈与を行ったとしても、その人が死亡保険金の受取人や死亡退職金の受取人になっていれば、3年以内に贈与された財産に相続税が課税されることとなってしまいます。

死期が迫った時期に生前贈与を行うのであれば、死亡保険金の受取人や死亡退職金の受取人になっているかも確認しなければ、有効な相続税対策にはならないこととなってしまうのです。

このように、生前贈与の失敗例は様々であり、至るところに落とし穴が存在します。

相続税対策を行うのであれば、税理士のアドバイスを求めるのが安全でしょう。

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